クローン病(くろーんびょう)と潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)はいずれも消化管の慢性炎症性疾患で、いずれも難治性(なかなか治りません)です。両疾患をあわせて、炎症性腸疾患(えんしょうせいちょうしっかん)と呼び、古くは、いずれも同じ病因から生じる同じ病気と考えられていました。しかし、現在では全く病態の異なる別の病気であることが判明しています。
クローン病は、10代~20代に好発しますが、下痢、腹痛、発熱などが主症状で、小腸や大腸に縦長い潰瘍(かいよう)や小さな丸い潰瘍が多発し、進行すると腸管が狭くなります。小腸や大腸のみでなく、すべての消化管に病変が生じえますので、食道や胃にも病変が生じ、胃カメラから診断がつくこともあります。口の中に病変ができることもあります。肛門部病変も頻度が高く、痔などの治療経過が芳しくないことから診断に至ることもあります。日本では、何故か男性患者が多く、女性患者の約2倍です。
潰瘍性大腸炎も、比較的若年層に多く起こりますが、中年~高齢層にも起こります。クローン病と異なり、血便、粘血便、粘液便が主症状ですが、下痢や腹痛なども起こります。大腸に地図状の浅い潰瘍が多発し、粘膜がもろくなり、小さな刺激でも粘膜から出血します。大腸以外に病変が生じることはほとんどありませんが、小腸や十二指腸に病変が起こることが稀にあります。潰瘍性大腸炎の問題点は、食中毒のような感染症と間違われ初期診断が遅れることです。逆に、本来は感染症であるにもかかわらず、潰瘍性大腸炎と診断され、無駄に治療を受けてしまうこともあります。また、大腸のみに病変が生じたクローン病を潰瘍性大腸炎と間違われ、適切とは言いにくい管理を受けることもあります。
クローン病も潰瘍性大腸炎も、診断や治療には数多くの経験が必要で、教科書的な知識のみでは不十分な診断に至ってしまうこともあります。消化器の専門医の中でも、特に両疾患を数多く経験している炎症性腸疾患の専門医に診てもらうのが望ましいのです。
手前味噌ながら、当院の院長も副院長もクローン病や潰瘍性大腸炎の診断や治療、あるいは臨床的・基礎的研究に長年にわたって取り組んできました。炎症性腸疾患を診断する上で、大腸内視鏡検査ができるだけでは足りないことがおわかりいただけたことと思います。似て非なる二つの疾患を正確に診断し分けるためには、小腸検査が十分にできなければならないからです。当院では、スクリーニング目的の楽な経口小腸造影検査(口からバリウムを飲んでもらうだけで痛くも痒くもありません)から精密検査用の小腸二重造影検査まで行うことができます。経鼻胃カメラで、楽に食道・胃・十二指腸を検査することもできるため、クローン病の胃・十二指腸病変であろうが、潰瘍性大腸炎の十二指腸病変であろうが、見逃すことはありません。鎮静(いわゆる麻酔)による検査もできますので、検査の苦痛を心配する必要もありません。
下痢が続く、血便がある、腹痛がよくならない、微熱が気になる、最近体重が減ってきた・・、このような症状を自覚されている方は、怖がらないで、当院を受診されてください。苦痛の少ない検査や適切な診断管理で、将来への健康不安を取り除きましょう。